>>> プレゼント  (お嬢、アイザック)

  はい、アイザック。

  お嬢、と呼んでる導き手の少女がにこりと笑んで渡してきたソレに、アイザックは首を傾げた。
「何だこれ?」
「エヴァとお買い物に行ってきた時に、見つけた物よ」
  あー、そう言えば飯の材料無くなりそうだから頼んだったんだ。
  だけど、どうしてそれとコレが一緒なのかわからない。
  って言うかコレ何? 服みてぇだけど何コレ?
  何に使う物なのかわからない。普段着には向いていなさそうだが。もし普段着用なら、趣味じゃないですお嬢。
「それはね、カッポウギ、って言うエプロンの一種なんですって」
「あー……成る程、前見たら確かにエプロンっぽい」

  良かった、普段着じゃない。ほっ。

「でしょう? それでね、それをアイザックに。と思って」
「……俺にか?」
「いつも色々作ってくれてるでしょう。そのお礼よ」
  私は食事を必要としないし、食べるのは貴方とエヴァだけれど。でもお礼がしたくて。
  そう付け足し、少女は続ける。
「それに今まで使っていたエプロン、かなり傷んでるわ。そろそろ新しい物にしてもいい頃だと思うの」
  確かに。
  元々ここにあった物らしいエプロンは、見つけた時から「あー近い内にご臨終しそうだ」と思ったのだ。
  だけど。だけども。
「カッポウギ、ねぇ……」
  何だろう、このゆるゆる感溢れるエプロンの一種は。
  真っ白で、袖が少しふわっとしてて。手前にポケットが付いて……あ、これは便利そうだ。

  いやそうじゃなくて。

  これを着たら何かが崩れるような気がする。根拠は無いが。
  しかし。

  ちら、と少女を見れば、ガラス玉の目を、真っ直ぐこちらへ向けていた。
  喜んでくれるかしら、と口にしていないが、そう言う心情なのは痛い程伝わる眼差しだった。
  普段は大人びた表情と言動だが、デュエルに勝てば抱きついて喜びを伝えてくる。
  そんな少女の、見た目通り少女らしい部分が、今、じりじりとアイザックを囲い込んでいた。
  その範囲が狭められキッチリ囲まれるのに、そう時間は掛からず。
  アイザックは、カッポウギを持ったまましゃがみ込んだ。
  ずっとこちらを見上げていた彼女と目線を同じ高さにして、にっ、と笑う。
「サンキューお嬢。有り難く頂戴するぜ」
「本当!?」
  あーほら超笑顔になったし。飛びついて来たし。
  妹いたらこんなだろうなー、と思う。
「ほんとほんと。嬉しすぎて涙出そうだぜ」
「うふふ、ありがとうアイザック! 大事にしてちょうだいね!」
「おう」
「それ、エヴァと一緒に選んだのよ。エヴァ、母親っぽくていい、って言ってたわ」

  何だと。



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